私に緑茶を手渡しながら「さっきはごめんな」と、申し訳なさそうに謝る本田君。
その横には沢井さんがピッタリはりついていて、敵意むき出しで私を見ている。
なにかをした覚えなんてないのに、沢井さんは私のことをよく思っていないような気がする。
いつもそう、私はなぜか女子に嫌われてしまう。
お茶を飲んで喉を潤し、教室に戻った。当たり前だけど、放課後の教室には私たち三人以外に誰もいない。
「じゃあ、亜子は帰るね。バイバイ」
「あ、待って。途中まで一緒に帰ろうぜ」
「え?」
「友達として、それぐらいはいいだろ?」
え、あ、まぁ、それぐらいなら。
断りきれなくて、思わず頷いてしまった。
「じゃあ俺は先に帰るわ。気をつけてなー」
わざとらしい笑みを浮かべて、高木君が教室を出た。
シーンと静まり返る教室内には、夕日が差し込んで幻想的な雰囲気が漂っている。
「俺らも帰ろうぜ」
「あ、うん」
二人で教室を出て昇降口へと向かう。そこには沢井さんが待ち構えていた。
「草太、一緒に帰ろう」
「さっきも言っただろ、無理だって」
冷たく淡々と言い放つ本田君は、沢井さんをスルーして靴箱の前まで歩いて行く。
「で、でも、草太と帰りたいんだよ」
「ごめん、無理」



