「亜子、本田君の気持ちがよくわかるんだよね」
「草太の気持ち?」
「好きな人に告白して振られる気持ち。元彼の時がそうだったの。すごく……好きだったから」
だから、本田君の気持ちが痛いほどよくわかる。太陽のことを思い出して、胸がギュッと締めつけられた。苦しくて、切なくて、どうしようもないほどの寂しさが込み上げてくる。
「だから、本田君に対して中途半端なことはしたくなくて」
「今でも好きなの? そいつのこと」
「そ、そんなわけないじゃん!」
「はは、そんなムキになって言い返さなくても。亜子ちゃんって、意外と真面目なんだな。まぁでも、時間の流れとともに人の気持ちも変わるんだしさ。あんまり深く考えずに、普通にしてやってよ」
優しくしてやれって言っていたかと思えば、今度は普通にって。コロコロ変わる発言に、ついていけない。
だけど思っていたよりも真剣に話を聞いてくれた高木君の言葉は、妙に説得力があった。
「この先草太のことでなにかあったら、相談に乗るからなんでも言ってよ」
「いや、高木君にだけは言わないよ。誰にでも言いふらしそう」
「は? 俺、こう見えても口は堅いほうだよ」
自分でそんな風に言っちゃうところが、ますます怪しい。
ワイワイ言い合っているうちに、飲み物を買い終えた本田君と沢井さんが戻ってきた。



