それに沢井さんに目をつけられてしまうのも嫌だ。できるだけ穏便に平凡に過ごしたい。
だから私はプールサイドへと引き返した。すると高木君が私の元へやってきて「沢井に邪魔されたかー」と苦笑する。
「べつに亜子と本田君はなにもないんだからね。それに、亜子より沢井さんとのほうがお似合いだよ」
「そんなこと言うと、草太がヘコむぞ。あいつ、亜子ちゃんにベタ惚れだから」
からかうように笑って、そんなことを言う高木君。
「や、やめてよ」
「あいつ、思ったことズバズバ言うし失礼なところもあるけど、いい奴だよ」
「そ、それは……」
そうなのかもしれないけど。興味、ないよ。
「なんでもないフリしてるけど、亜子ちゃんに振られたことで相当ヘコんでると思う。だから、優しくしてやって? な?」
「……っ」
そんなこと言われたって、どうすればいいのかわからない。優しくって言われても、無理だよ。期待させてしまうことになるし、悪いもん。
じゃあ、いったいどうすればいいの?
「高木君は、自分に告白してきた女の子と仲良くできる? 好きになれないのをわかってて、その女の子に優しくできる? 亜子には難しいよ」
「俺? まぁ俺はそんなのべつに気にしないタイプだから誰とでも仲良くできるけど。草太はマジでいい奴だから、その良さが伝わればいいなぁってね」
なんだかんだ言いつつ、高木君と本田君は仲が良いらしい。



