「べ、べつに赤くなってねーよ!」
「またまたー、なに照れてんの?」
「照れてねーし」
そう言って本田君がこっちをチラ見した。その顔は誰がどう見ても赤い。
「あ、亜子、あっちのほう掃除してくるね!」
気まずい空間から逃げるようにしてその場を離れる。暑いのもあって、なんだかクラクラした。
それに二人と一緒にいると、女子からの視線がひしひしと突き刺さって居心地が悪かった。また陰口を言われるのが嫌だったし、二人と一緒にいることで目立ちたくもなかった。
強くなったと思っていたのに、中学の時のことがトラウマになっているのかもしれない。
一人黙々と作業をしながら、遠くにいる本田君をチラ見する。さっきの女子やほかのクラスの男子に囲まれて、本田君は笑っていた。
「草太、水飛ばすなよ!」
「ははっ、まいったか」
「もう! やめなよ、子どもっぽいんだから」
「最初にしてきたのは拓也だからな。やり返さないと気がすまねー」
デッキブラシを振り回す本田君は、無邪気な笑顔でとても楽しそう。
子どもっぽいところもあるんだなぁ。
色んな人に囲まれて人気者だし、本田君にはそこがお似合いだよ。
私なんて似合わない。
本田君の周りにはかわいい子がたくさんいるのに、どうして私なの?
未だにあの告白は信じられなくて、冗談だって言ってくれれば大いに納得できる。
「こらー、なにを遊んでるんだ! 真面目にやらないか!」
先生の怒声が飛んできて、本田君たちの悪ふざけはそこで終了。



