「あー、プール掃除だりー。この俺様がなんでこんなこと……」

ぶつぶつ言いながら、デッキブラシを動かす高木君。プールの中は足首まで水が張ってあって、中は苔や色んな汚れが混ざり合ってヌメヌメしている。

うー、気持ち悪いよ。

苦手なんだよね、ヌメヌメって。

だけど授業中にスマホをいじっていた私が悪い。運悪く見つかっちゃったし。

「亜子ちゃんも、女子なのに大変だな。ちゃんと日焼け止め塗ってきた?」

「え……?」

いきなり話を振られてビックリした。それに、高木君とはほとんど話したこともないのに、いきなりちゃん付けの名前呼びとか。

目が合うと高木君はにっこり笑った。甘めのベビーフェイス。小顔でスタイルもよくて、おまけにオーラがすごい。モテオーラというか、イケメンオーラというか。

とにかく、アイドル並みに整った顔をしている。

「日焼けは女子には大敵っしょ? 将来のためにも、ちゃんとケアしないと」

ウインクしながらそんなことを言う高木君は、女子の扱いにすごく慣れている。

遊び人っていう噂は、あながちまちがいじゃないのかも。

「聞いてる、亜子ちゃん」

「え? あ、うん」

「亜子ちゃんって、いっつもボーッとしてるよな」

「そ、そんなことは……」

ない、と言おうとして口を閉ざした。