女の子は言うだけ言うと、パタパタと足早に教室を出ようとする。

や、やばい。

こっちに、来る?

そう思ったけど、女の子は私がいるほうとはちがった教室の前方のドアから出て行った。

走り去る時に見えたその横顔は、恥ずかしさのせいで真っ赤だった。

……相変わらずモテるんだ。

その子と一週間だけ付き合うのかな……。

そんなの、嫌だよ。

キリッと胸が痛んで、思わず手で押さえる。

忘れ物を取りにきたのに、教室の中に草太がいると思うと入れなくて……。

そうこうしているうちに、目の前のドアがいきなり開いた。

「きゃあ」

「うわっ」

お互い目を見開いてビックリする。

心臓がドキドキしてるのは、こうして向かい合うのがすごく久しぶりだから。

「ご、ごめんね……」

「こっちこそ、ごめん」

草太は無表情でそう言い、視線だけを横にズラした。

まるで私の顔なんて見たくないというように。

「きょ、今日は部活ないんだ?」

「テスト前だから」

「そ、そっか……」

ぎこちない空気が流れる。他になにを話せばいいのか、わからない。

「あ、じゃ、じゃあね……亜子、忘れ物取りに来ただけだからっ」

この空気に耐えきれなくて、開いたドアから教室へと足を踏み入れる。

草太はそんな私を見て、なにも言わずに昇降口のほうへと歩いて行った。