「なんで……? 前は、あたしのことが好きだって……」

「それは昔の話だろ。今はもう、朱里には一ミリも気持ちはない」

はっきりそう伝えると、朱里は唇を尖らせてあからさまに不機嫌になった。

「そ、草太君の、バカッ! ふんっ、もう知らないっ! 声かけたのだって、昔とちがって背が高くなってたからだしっ! この人を彼氏にしたら、ステータスが上がるかなって思っただけだからっ! カン違いしないでよね!」

プンプンと怒りながら、朱里は背を向けて去って行く。

なんなんだよ、朱里の奴。

逆ギレして帰って行きやがった。

俺の魅力は、背が高くなってたことだけかよっ。

若干呆れつつも、踵を返して歩き出す。


夜空を見上げながら、浮かんできたのは亜子の顔だった。