その日の夜、私は思い切って草太に電話をした。

『もしもし、亜子?』

『うん、あ、いきなりごめんね?』

なんだか緊張してドキドキする。

『用事があるわけじゃないんだけど……』

『うん、いいよ』

草太の優しい声が聞こえてきた。

『あ、あのね、朱里ちゃん……今日も草太のこと待ってたんでしょ?』

すごく、気になる。

どんな話をしたんだろう。

いつまで一緒にいたんだろう。

草太は、朱里ちゃんのことをどう思っているんだろう。

『あー……な。迷惑だって言ってるんだけど、しつこくて。正直、俺もまいってる』

『……そっか』

やっぱり朱里ちゃんは草太のことが好きなんだ。

好きになったらまっすぐにその人を追いかける。

まるで、昔の私みたい。

『とにかく、亜子はなにも心配しなくていいからな?』

『あ、うん。それと──』

私のこと、どう思ってる?

ほんとはそこが、一番引っかかってるところなのかもしれない。

だけど、草太を前にすると言葉が詰まって出てこない。

『どうした?』

『あ、ううん、やっぱりなんでもない! じゃあ、おやすみ、バイバイ!』

『あ、おう。おやすみ、また明日な』