大きく目を見開いたまま固まる。頭が真っ白になるって、こんな時のことをいうんだ。

草太は慣れたように目を閉じて、私にキスをしている。

頬ではなく……唇に。

昨日と同じ唇の感触に、未だ思考が停止している頭を必死に動かそうとしてみる。

昨日中途半端なまま逃げるように部屋に帰って、それから……。

全然寝られなかった。

今日だって観光中ずっと草太のことが頭から離れなくて、具合いが悪いって心配だったんだ。

だから……意を決して観光から抜けてきた。

それなのに……。

必死に頭を回転させてみるけれど、全然わからない。

それどころか、考えれば考えるほどわからなくなっていく。

草太の唇はとても温かくて、こんな状況なのにキュンとしてしまっている私。次第に体温が上昇して、ドキドキしてくる。

ダ、ダメだ、クラクラするよ、倒れそう。

草太はしばらくして唇を離した。

熱を失った唇が急速に冷めていくのを感じる。


キスをした時の草太は、なんとなくだけど怒っていたような気がする。

こういうことを太陽としてきたんだろって、慣れてるんじゃないのって……。

慣れて、ないよ。

ファーストキスだったんだ。

笑ったのだって、押し倒されてどんな顔をすればいいかわからなかったからだよ……。

草太はバツが悪そうに私の上から退くと、背を向けてうつむいた。

「……ごめん」

よく耳を澄まさないと聞き取れないほどの小さな声。