「あ、そうだ」
思い出したように、亜子がカバンの中を探り始める。
「あったあった」
そしてどうやらお目当ての物を見つけたらしい。
「これ、お土産。お揃いのスマホケースだよ」
「え、お土産とかよかったのに」
「いいの、亜子が勝手にしたことだから。受け取ってもらえると嬉しいな」
それは京都限定の物らしい。金閣寺のイラストが描かれたポップでかわいいキャラクターもののスマホケースだ。
「サンキュ、嬉しい」
だって初めての亜子からのプレゼント。しかも、お揃いってなんだそれ。嬉しすぎるだろ。
「あは、よかった」
亜子はホッとしたように頬をゆるめた。なんとも言えない気持ちになって、うつむく。
「どうしたの?」
「いや、なんでも」
「ウソ、なにかあるって感じがする」
身体が密着しそうなほどに詰め寄ってくる亜子は、下から俺の顔を覗き込もうとする。
ますます冷静じゃいられなくなって、俺の心臓は早鐘を打った。
マジで、なんだ、これ。
それに、こいつ……。
危機感なんてまったくない。
俺のことなんて、男として見ていないってことか?



