「大丈夫……大丈夫だから」
鍵を開けてドアノブをひねった。たてつけが悪いせいか、キィーッと音を立ててドアが開く。
目の前には眉を下げて涙目になっている亜子がいて、不覚にもドキッとしてしまった。
そんな亜子を見て、かわいいなんて思ってる俺がいる。
「高木君から朝ご飯を食べられないほど具合が悪いって聞いて……すごく心配になったの。観光してても落ち着かないから、亜子だけ先に帰って来ちゃった……っ」
「マ、マジかよ。拓也の奴……」
わざと大げさに言いやがったな。亜子は拓也から俺のことを聞いて、楽しみにしていた観光を投げ出してまで俺のところに来てくれた。
やべぇ、なんだそれ。
なんだかもう、それだけで胸がいっぱいだ。
「顔、赤いよ? 熱でもあるの?」
「え、いや、これは」
そんなんじゃなくてさ……気づけよ。
おまえのことが好きだからだってことに。
「ダメだよ、まだ寝てなきゃ」
亜子は俺の腕を取って、部屋の中に連れ戻そうとする。
背中のほうでパタンと閉まったドアに、ドキッとした。つーか、なんでこんなに無防備なんだよ。
「ほら、早く横になって?」
亜子は俺を布団のそばまで引っ張った。こんなになんのためらいもなくできるってことは、やっぱ慣れてんのかな……。



