──コンコン

「んっ」

ノックの音にハッとして一気に目が覚めた。

──コンコン

もう一度部屋がノックされた。あたりは薄暗くて、頭がボーッとする。まだちょっと頭が痛い。

考えすぎて眠りが浅かったせいか、スッキリしない。なんでこんなに気分が重いんだよ。気のせいかな、身体も少し熱い気がする。

起き上がり、立ち上がって、部屋のドアの前まで行こうとする。ボーッとするせいか、今まで寝ていたせいか、足元がふらついた。

「草太……寝てるの?」

すると、ドアの向こう側から予想もしていなかった声が。

え?

亜子……?

なんで?

思わず手が止まった。じっと息を潜めて、穴が開くほどそこを凝視する。

「寝てる、よね?」

「え、あ……うわっ」

落ちていた誰かのタオルを踏んづけしてしまい、前のめりにズルッとバランスを崩す。大きな声が出て、思わず口元を手で押さえた。

「草太? 起きてるの? 大丈夫?」

大きな音がしたのと、声が聞こえていたらしい。ドアの向こうで亜子の焦ったような声がした。

うわっ、やべ。

どうすりゃいいんだよ。

「ねぇ、返事してよ。お願いだから」

今にも泣き出しそうな亜子の声。拓也から俺のことを聞いて、心配して来てくれたのか?