ドジで抜けているところもあるけど、いつも一生懸命で、他人に弱さや涙を見せないしっかり者の女の子。
振り向いてほしくて必死で、今まで頑張ってきたつもりだった。それなのに、最後の最後でなにやってんだよ……。
迷惑じゃないなんて期待するようなことを言われて、舞い上がっていたバカな俺。
明日からどんな顔で会えばいいんだよ……。
「遅かったな、なにやってたんだよ亜子ちゃんと」
「べつに……なんも」
部屋に戻ると同室の拓也がニヤニヤしながら聞いてきた。なにかあると踏んでいるような顔にイラッとする。
「顔、真っ赤だけど? まさか、勢いあまって押し倒したとかじゃねーだろうな?」
「はっ? そこまではしてねーよ!」
「はっはーん、そこまでは、ね。じゃあどこまでしたんだよ?」
やべっ、墓穴掘った。
「なんも……してねーし。つーか、なんでおまえにそんなこと言わなきゃいけねーんだよ」
「いいだろ、俺とおまえの仲なんだし。恋愛経験は、俺のほうが上だかんな?」
ここでこいつに話しても笑われるだけだ。もしくは、からかわれて終わりってこともあり得る。
いつもなら絶対に話したりしない。だけど今回は、完全に行く手を阻まれた。もうこれ以上打つ手なし。どうすればいいのか、わからなかった。
迷惑なら、やめる。
そう言ったのは、ただ亜子の反応が気になって試しただけだ。
せっかくいい方向に傾きかけてたのに、それを台無しにしたのは紛れもなく俺だ。