私なんかよりも、何倍も何百倍もお似合いだよ。
「名前は?」
「柳内 亜子だよ」
「亜子ちゃん、か。かわいい名前だね。あたしは横田 朱里だよ。好きに呼んでね」
かわいい笑顔。たった数分で朱里ちゃんの人柄の良さがわかった。明るくて、前向きで、とてもいい子。
どうしてこんなに気分が沈むんだろう。
「あ、草太君」
え?
「朱里?」
すぐそばで聞き覚えのある声がした。
振り返るとそこには、野球部のメンバーと売店にきたであろう草太がいた。
「なんで朱里がいんの?」
「なんでって、この旅館に泊まってるからだよ」
「マジで朱里ちゃん? え、なんで?」
高木君がビックリしている。
「マジだ、横田じゃん。懐かしー」
「わぁ、ほんと。みんな懐かしい」
同じ中学出身の野球部のメンバーと楽しそうに会話を繰り広げる朱里ちゃん。その横で、咲希が私の耳元に唇を寄せる。
「あれって、横田さんでしょ? 同じ中学だったから知ってる」
「あ、そっか。そういえば咲希は草太や高木君と同じ中学だっけ」
「相変わらず、なんだかやな感じね」
「え? そう?」
「私、ああいうか弱いタイプは嫌いなの。男に優しくされ慣れてますみたいなドヤ顔が許せない。あれは絶対狙ってるよ」
「えー? 普通にいい子じゃない?」
「どこが? 絶対に裏がありそう」