「言える時がきたら言うね……」
曖昧に笑うと咲希はそれ以上なにも言ってこなかった。
「朱里ー、アイスあったよー! どれにする?」
「どれも美味しそう。あたし、このチョコのやつにするー!」
朱里。
聞き覚えのある名前に、ふと振り返った。すると、偶然にもその場にいたのはお風呂上がりの朱里ちゃんだった。
友達とアイスを選んでから、私たちのすぐ後ろに並ぶ。自然と目が合い、向こうも私に気がついた。
「さっきはどうも」
「え、あ、こちらこそ」
まさか、話しかけられるとは思わなかったからビックリした。慌ててそう返すと、朱里ちゃんの視線は私の手元に。
「アイス、あたしも同じの。チョコが一番美味しそうだったよね」
「あ、うん。美味しそうだった」
「だよね。あたしたち、気が合うかも」
なんて言いながら、出会って間もないほぼ他人の私に人懐っこい笑顔を浮かべる。スッピンの朱里ちゃんは、童顔で子どもっぽく見えるけど、すごくかわいい。
無邪気というか、屈託がないというか、その笑顔には悪意がひとつもなくて、純粋そのものにしか見えない。
世の中の汚いものとはまるで無縁で、きれいなものしか似合わないような気さえする。
そしてそんな朱里ちゃんと草太は、ものすごくお似合いだ。