ひときわ大きな風が通り抜けるのと一緒に、か弱い女の子の声が聞こえた。折れそうなほど細い足と、まるで粉雪のように白い肌。
ゆっくり顔を上げると、そこには見知らぬ女の子の姿があった。草太の目の前に立って、風で揺れる髪の毛を手で押さえている。
私と一緒くらいの、もしくはちょっと低いくらいの小柄で華奢な女の子。セーラー服に、紺色のプリーツスカート、黒いローファー。
目が大きくて、色白で、小顔で、とてもかわいい。その女の子には、どこか見覚えがあった。
見つめ合う二人。草太は驚きを隠せないのか、目を見開いて固まっている。
それを見てなんだか胸がザワザワした。言いようのない不安が奥のほうから押し寄せてくる。
「やっぱり、草太君だよね?」
確信を得たらしい女の子が、パアッと明るい笑顔を浮かべた。それはまるで一面にかわいらしい花が咲いたような、笑顔。
この笑顔、見たことある。
草太の部屋で見た、写真の女の子。
「あ、かり……?」
「久しぶりだね」
「なんで……」
戸惑うように揺れる瞳に抑揚のない声。こんなに動揺している草太を見るのは、初めてだ。
「修学旅行だよ。草太君の高校もだよね? でもまさか、こんなところで会うなんて思ってもみなかったな」
嬉しそうに笑う朱里ちゃん。