せめて飲み物のお金は払うと言っても、草太は俺が勝手に買ってきたものだからと言って受け取ってくれなかった。

「ありがとう」

譲らない草太に私が折れて素直にそう口にする。草太は満足そうに微笑んで、飲み物をひとくち飲んだ。

私はポップコーンを口へと入れる。疲れた体にキャラメルの甘さがちょうどよかった。

うーん、美味しい。

「ぷっ、そんなに幸せそうにキャラメルポップコーン食う奴、初めて見た」

「だって、美味しいんだもーん。草太も食べる?」

「いや、俺、甘いものは基本的に苦手なんだよな」

「えー、美味しいのに。騙されたと思ってためしにおひとつ、はい」

人差し指と親指でキャラメルがかかっていない白いポップコーンをつまみ、口元へ持っていく。

我ながら恥ずかしいことをしているけど、この非日常の空間が手伝ってそうさせたのかもしれない。

草太は一瞬戸惑うような表情を見せた。

でも、顔を近づけてきて口を開ける。

あ、ヤバい。

自分からしておいて、今さらめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。

──パクッ

わっ。

指先が唇に軽く触れた。

その瞬間、全身に火がついたみたいに熱くなる。