「迷子になんかならないもんっ」
頬を膨らませながらプイとそっぽを向いて、スネたフリをする。
「はは、スネてんの?」
「うるさい」
「ごめんって。もう言わないから、許して」
顔の前で手を合わせて、お願いするように謝ってくる。少し垂れた眉毛と、下がった目尻、はにかむ口元。
そのどれもが全部カッコよく見えてしまう私は、きっとどうかしている。咲希があんなこと言うから……ものすごく意識しちゃってる。
「許さないよ」
うそ、ほんとは最初からスネてなんかいない。スネたフリをしたら、どんな反応をするんだろうっていう好奇心。
「怒るなってー。キャラメルポップコーン買ってやるから」
「え? ほんと!?」
一瞬で笑顔になった私を見て、草太が顔を崩して笑った。
「単純な奴め」
そう言って頭を軽くポンと撫でられる。草太はクリクリの目をこれでもかってほど細めて、満面の笑みを浮かべている。
こういうさりげない動作に、すごくドキドキさせられる。それもすごく自然にやるから、余計に。
慣れてるよね、女子の扱いに。それとも、無意識なのかな。そうだとしたら、なんてズルい人だろう。
一人赤くなる私と、余裕の草太。



