「おーい、亜子ちゃーん! 咲希ちゃーん! 一緒に花火しようぜー!」

遠くから高木君に手招きされて、行かざるを得なくなった。

無言で花火をする本田君は、まだ不機嫌そうだ。

「こいつ、さっきからずっとこんな調子なんだよな。亜子ちゃん、なんとか言ってやってよ」

テンションが低い本田君を、苦笑いしながら見やる高木君。

「え? えーと、花火きれいだね」

「……うん」

ぶっきらぼうに答えてくれる本田君は、私と目を合わせようとはしなかった。

「なんだよ、よそよそしいな。なんかあった? 俺でよければ、話聞くけど」

「なんもねーよ。うっせー拓也は置いといて、あっち行こ、柳内さん。あ、南野さんも」

立ち上がり、高木君から離れようとする本田君。

「なんだよー、あいつ」

プンプンと頬を膨らませて怒る高木君の横で、南野さんが私の背中を押した。

「私はここに残るから、行って?」

「え、でも……」

「イエーイ、咲希ちゃんは俺と花火するべ」

「もう、暑苦しいから近寄らないで」

「ひ、ひどい、咲希ちゃんまで俺を邪魔者扱いするなんて」

「ほら、早く行って?」

もう一度背中を押されて、私の足はようやく動き出した。