「真面目というか、期待が大きすぎるというか。私は夏期講習だけで十分なんだけどな」
普段あまり自分のことを話さない南野さんは、少しだけ私に心を開いてくれたのかもしれない。
沢井さんたちによる嫌がらせが終わってからというもの、私と南野さんは少しずつ仲良くなり始めた。
「沢井さんたちのことが解決したっていうのに、なんだか元気ないね」
「え?」
「なんかあった?」
「ううん、なにもないよ」
また愛想笑いをしてしまう。でもなんだかうまく笑えない。
「でも、しょんぼりしてるじゃん。柳内さんって、わかりやすいからね」
「ううっ」
前から思ってたけど、南野さんは本田君と一緒でズバズバものを言う。そのくせサバサバしてるから、なんだか話しやすいんだ。
「実は、本田君を怒らせたかもしれなくて。さっきからずっと、しゃべってないんだ」
視線が無意識に遠くにいる本田君に向く。本田君は高木君や男子の集団と花火をしている。本田君以外の男子はみんな楽しそうに笑ってるけど、本田君だけは静かでいつもの彼じゃない。
やっぱりそれほど怒ってるのかな。
「本田君のことが気になってるんだ?」
「うーん、まぁ」
「怒ってるというよりも、元気がないような気はするけどね」
同じように本田君に視線をやって、南野さんがつぶやく。