飲み物を手に取り、お会計の列に並ぶ。なんとなく気まずくて、本田君に声をかけられなかった。
うつむきながらまだまだかかりそうな列にいると、隣にスッと人の気配がした。
「かして」
「あ」
声を出した瞬間、手にしていたペットボトルがヒョイと奪い取られた。
「店の外で待ってて」
何事もなかったようにそっぽを向いているその横顔は、まだどこか不機嫌そう。
「でも」
「いいから」
強くそう言い切られて、大人しく外に出て待つことにした。
コンビニの前のガードレールにもたれて、上を見上げる。もうすっかり暗くて、夜空には星が瞬いていた。ざわざわとした喧騒。この時間は、スーツを着たサラリーマンの姿が多く見られる。
曖昧になったままだけど、さっきのこともある。
抱きしめられた時の腕の感触が今も残っていて、体がすごく熱い。
どうすればいいんだろう。
普通にできないよ。
本田君はコンビニから出てくると、私に向かって無言でペットボトルを差し出した。
「あり、がとう」
そう言って受け取ると、本田君は小さく頷いてくれた。そして気まずそうに顔を伏せ、また背を向けて歩き出す。
ついて行ってもいいのかな……?
少しあとから、本田君の背中を追いかける。
なんだかとてもへんな空気が流れたまま、花火をするという近くの公園までの道のりを無言で歩いた。