どうして?
なんで?
時計の針が進むたびにドキドキしているのは。
あと十分で約束の四時になる。朝からそわそわして落ち着かなくて、家の中をムダに行ったりきたり。これから本田君と会うのに、緊張してしまっている。
──ピンポーン
「わっ」
──ドキン
チャイムが鳴って本田君かどうかもわからないのに、思いっきり心臓が跳ねた。ドッドッドッドッと止まらない。インターホンに映し出されたのは、私服姿の本田君。
「は、はい」
「あ、俺だけど」
「すぐ下に行くね」
そう言って通話を切ると、準備していた夏らしいカゴバッグを持って玄関へと向かう。全身鏡に自分の姿を写して最終チェック。
今日は薄くメイクをして、服は水玉模様の淡い水色のワンピース。白いカーディガンを羽織って、日焼け対策もバッチリ。
髪型は昔からずっとボブカットで飾り気がないけれど、今日はハート型のかわいいピン留めをつけてみた。
大きなお花が中央についたサンダルを履いたら完成だ。
「よし、行ってきまーす」
当然だけど返事はない。だけど今日は、今日だけはさみしくなかった。
エレベーターを待つ時間がもどかしい。それほど私は今日の日を楽しみにしているってことなのかな。
それとも……本田君に会えるから?
いやいや、そんなはずはない。
だって、この前まではそんなんじゃなかったもん。



