「もう、結愛ちゃんってば。まだまだ先のことだよ」

「えー、そうかな? あたしはわりと近い未来に叶うような気がしてるよ」

あははと結愛ちゃんの言葉を笑い飛ばす。きっと本田君が今の私を見たら、無理して笑ってるって言うんだろうな。

もちろん本田君のことは好きだけど、友達としてっていう意味で。そこに恋愛感情はない。あるはずがない。

暗い部屋の中で突然スマホの画面が光った。そこに映し出された文字は『本田君』。

「電話だ」

どうしたんだろう。

「早く出たほうがいいよー」

結愛ちゃんはまたからかうように笑う。

「ごめんね、ちょっと外行ってくる」

結愛ちゃんの前で話すのは照れくさくて、私はスマホを手にして部屋の外に出た。

それにしても、いきなり電話をしてくるなんていったいどうしたんだろう。

なにかあったのかな?

なんだか少しドキドキしているのは、きっと気のせい。

「もしもし」

「あ、柳内さん? いきなりごめんな。今、大丈夫?」

久しぶりに聞く本田君の優しい声。電話の向こう側で、どんな顔をしているのかが想像できた。

「大丈夫だよ。どうしたの?」

「いや、うん、あのさ。明日なんだけど、空いてたりする?」