逃げてしまった最低な私。でも、そうすることでどこかホッとしている私もいる。
立ち去るときにチラッと見えた本田君の顔は、口角を上げて無理して笑っているようだった。
走っていると次第に息が切れてきて、教室にたどり着いたときにはマラソンで完全燃焼したかのように疲れていた。
「はぁはぁ……」
体力だけは自信があるのに、こんなに疲れているのはなんでだろう。胸がドキドキと速く大きく動いている。
でもそれは、走ったせいだよ。うん……絶対にそう。それ以外にドキドキする理由なんてあるはずがない。
呼吸が一定になってきたところで、カバンを持って教室を出た。学校から家までは歩いてすぐなので、足速に校門を出て帰路へつく。
私の家は駅の近くにあるマンションで、マンションから徒歩五分くらいの場所に繁華街があり、カラオケやゲームセンターなど学生が遊ぶところがたくさんある。
少しガラが悪いのが難点だけど、それでも特に今までトラブルに巻き込まれたことは一度もない。
マンションのオートロックを解除してエレベーターに乗って十階へ上がる。
私の高校入学と同時に、お父さんの転勤でこのマンションに引っ越してきて一年ちょっと。



