「三月まゆ」


「は、はい!」


いきなり真剣な顔と声で名前を言われ、思わずぴしっと正座をしてしまった。


「今日付けで君を楠家の同居人に任命する。社長命令だから拒否権はないよ」


「ず、ずるいですよ零さん!急に社長として命令するなんて!!」


「だってまゆ、全然OKしてくんないから。それに社長としては、自分の店の従業員が野宿っていうのはいい気分がしない。もちろん恋人としてもね」


納得がいかないまま、荷造りをして再び零さんの車に乗った。一応大家さんに鍵を返したけど、3ヶ月後にまた戻るつもり。だから零さんの所にいるのは3ヶ月だけ。そう決めてる。


「そうだ、まゆ」


「なんですか?」


「さっき一緒に住もうって言ったんだけどさ、俺一人暮らしじゃないから。でもまぁ、すぐ仲良くなるよ…多分」


多分って…。すごい不安になること言わないでくださいよ。でも零さん一人じゃないんだ。社長さんだし、住み込みの家政婦さんとかかな?


二人きりじゃないことに少し安心していると、車がマンションの前で止まった。


「車止めてくるから少し待ってて」


車を降りると、零さんは駐車場に向かった。一人残された私は、目の前のマンションに言葉がでなかった。