ーガチャッ


「失礼します。社長、お車のご用意が出来ました」


車を取りに行ってた幹さんが戻ってきて、良かった…と、ホッと胸を撫で下ろす。このまま零さんと二人きりでいたら心臓がもたなかった。


「お前、わざとだろ」


「なんのことでしょう?大変お待たせして申し訳ありません。それでは三月様行きましょうか」


スッと背中に手を回され、一瞬ビクッとした。背中にかろうじて触れていないものの緊張する。こういうのって漫画の世界だけかと思ってたけど本当にするんだ。


「なぁ、何勝手にお前がまゆを連れていこうとしてるの?」


腕を引かれ、零さんに抱き締められた。


「俺が連れていくから、お前は先に行け!」


「はぁ…。わかりました。全く嫉妬深い男は嫌われますよ」


幹さんは呆れながら言うと、部屋を出てしまった。早く後を追わないといけないのに、零さんは離してくれない。


「零さん?」


「俺、ここまで嫉妬深いなんて思わなかった…。まゆを誰にも渡したくない。好きだよ。すごく好き…」


どうしよう…。好きって言いたい…。


「私…本当は書類を届ける時に零さんからの告白も断ろうとしていたんです。私零さんのこと、何も知らないし…」


そうだね…と悲しい声と共に抱き締める力が強くなる。ちゃんと言わないと…。それで零さんには笑顔でいてもらいたい。


「でも…この短時間で…私…私…」