男の子はビクッと
驚いたように私を見た。


「…旭海人君だよね?」


もう一度名前を口にした。


だけど、


「…人違いじゃないの?
手、離して。」


その男の子から出た言葉は
突き放すようなものだった。


ショックでその場に立ち尽くしていると、


「…行かないの?遅刻するよ。」


その男の子が声を
掛けて来てくれたんだ。


ついさっき、あれだけ悲しかったのに
そのたった一言で私の心は軽くなった。


確かに、こんな所で
偶然会うなんて有り得ない。
顔は面影があるけど、
雰囲気や話し方はまるで別人みたいだし。
人違いだろう、そう思うようにしたけど、
その優しさが、あの時の男の子とリンクして
心のどこかでこの男の子が
私の初恋相手ならいいのに。
なんて思いながら一歩後ろを歩いて
学校に到着した。