初恋レモン

「ありがとう。」


ドライヤーを机に置く音が響く。
いつの間にか消されていたテレビ。
そのおかげでリビングには
雑音が無く、聞こえてくるのは
微かな私と海人君の呼吸音と、
服がソファに擦れる音。


まるでここには私と海人君しか
いないんだよって
強調しているように。


そんな空気に、
さっきまでの私ならすぐに逃げていた。
でも、今は違う。
さくらちゃんや女優さんの言葉、
それに、この下着が勇気をくれてるような。
勝負下着っていうだけあるのかも。
なんか頑張れそうな気がする。


先に動いたのは海人君。
どこかへ行こうとしたので
その手を掴んだ。


「どこ、行くの?」


「いや、ちょっと…。」