「じゃあ、海人君はこれ持ってて!
家で作ってるレモンの香水!
すっごくいい匂いなんだよ!」


菜々が俺にくれたのは小さなビン。


蓋を開けると
レモンの爽やかな香りが
鼻をかすめた。


「…ありがとう、ずっと持ってる。
だから、いつか絶対に逢おう!」



お互いに不確かな約束を交わし、
俺は東京へと帰った。




そんな菜々との出来事があった2年後。
母親の浮気が原因で俺の親は離婚した。


そこからだな。
俺が女を信じなくなったのは。
関わりを絶つようになったのは。


あれだけ父さんの事を愛していた母親が
他の男を好きになった。


女なんて、みんな裏切るんだ。


そう思っていたのに、
なぜか菜々の事だけは忘れられなくて、
いつか逢えることを望んでいる自分がいた。