大きな木の下で見た景色は
今も頭の中で蘇る。
見上げたそこには、青空の下にある
レモンの傘に囲まれているような
不思議な感じだった。


元々都会育ちの俺には
初めてだらけの事で浮かれていた。


その木でレモン狩りをしようと
手を伸ばしてみたけど届かなくて、
ピョンピョン跳ねているところへ
1人の女の子がやってきた。


「ねぇ、あれ欲しいの?」


その女の子は
前髪を編み込むようにして止めてあるから
顔がはっきりと見えていて、
緩い天然パーマでショートヘアの
可愛い子だった。


「うん。」


そう短く返事をすれば
ニコーッと笑って木に登りだした。


「え!危ないよ!」


俺のそんな心配を裏切るように
スイスイと登って
目的のレモンを手に取った。