スマイルウォーター

36話
「もしいつか歩けるようになったら繋と手を繋いて歩きたいな」実奈は笑顔だった。
「そうだな。重い椅子を押さないで横に並んで歩いて行きたいな」
繋は高校生の頃を思い出した。
ずっと手を繋いで歩きたかったが歩けなかった悔しさ、悲しさ、でも今後ろではあるが一緒に歩いている。
「私、繋と初めて病院で出会った時、思った事があるの」
「何だ?」繋は興味を持つ。
「高校生の頃に繋と会ったような感じが」
繋は注目する。
「最初は似ている人かと思った。でも違う。似ている人じゃない。繋は高校生の時の友達だと」
実奈は繋の事を思い出した。
「実奈………」繋は動揺する。
「ごめんね。すぐに思い出せなくて。5日前にふと思い出したの」
「実奈………俺の事、怒っていないのか? 俺は実奈を裏切ったのに」繋は涙を浮かべた。
「裏切られたなんて思っていないわよ。だって繋はこんな私を受け入れてくれたんだしお父さんを救ってくれたんだし」実奈は笑顔だった。
繋は思わず膝をついて泣き出してしまう。
繋にとってやっと本当の実奈と再会出来たような気分だった。
そして実奈に対する罪悪感が時を超えて浄化したようだった。
「私……繋と出会えた事で高校生活が楽しくなった……」
実奈の頭の中には繋と一緒に勉強をした事、他の友達も交えて一緒に遊びに行った事、体育館で適当にバスケットボールをした事、そんな記憶が蘇っていく。
繋は立ち上がった。
するとイルミネーションが光り始めた。
実奈は笑顔になる。
「綺麗だね」
「そうだな。イルミネーションってこんなにも綺麗だったんだな」繋は目を輝かせる。
実奈は繋を見る。
「繋って意外とロマンチックね」実奈は思わず笑った。
「実奈だって高校生の時、行きたいと言っていたじゃないか」
「私が?」実奈はそこまで思い出していなかった。
しかしそれでも問題はなかった。
人は全ての事を覚えていない、それに自分の事だけでも思い出してくれただけで繋にとっては奇跡だったから。
そして繋は実奈の車椅子を押して歩き出した。
その光は2人を祝福するような光だった。