恋のキューピッドは怪獣でした!

晩御飯の時に、もう一度話してみようかと迷ったりもしたけど…
私はもうあきらめることにした。
史郎さんの言う通り、料理学校に通い始めたと思うことにする。
それも、厳しい先生にあたってしまったとでも思えば、なんとか乗り越えられるだろう。



とは思ったものの、やっぱり毎日、気分は重いままだった。



「……明日から手島さんが来るんだよな?」

日曜日の晩御飯の時、不意に史郎さんがそんなことを口にした。



「はい、そうですね。」

私はひきつった笑みを浮かべてそう返した。



「手島さん、料理はプロ級なんだ。」

「……そうなんですか?」

「本当は料理人になりたかった…なんて言ってたことがあった。」

「へぇ…そうなんですね。」

「でも、いろいろとあって、その夢は断たれたみたいだ。
夢って、なかなか叶えられないものだな。」



その言葉にはなにかしみじみしたものがこもってるように聞こえた。
もしかしたら、史郎さんは手島さんの『いろいろ』を知ってるのかもしれない。
直感的に、私はそんな風に感じた。