恋のキューピッドは怪獣でした!

「史郎さん!」

「あ…どこ行ってたんだ?」

「私、昔から走るの苦手で…」

それは嘘じゃない。
子供の頃の運動会では、いつも私はビリだった。
しかも、大人になれば走る機会なんてほとんどなくなるんだから、遅くなるのも当然ってもんだ。
その時、私は、史郎さんが私と同じ袋を持っていることに気が付いた。
レギラの本の袋だ。



「あ、本、買われたんですか。
どうしよう?私も買ってしまいました。」

「良かった。」

「え?でも……」

「本は一人一冊しか買えないんだ。
でも、見る用と保存用がほしかったから…
ありがとう、助かったよ。」

「え……?」

ってことは……もしや、史郎さんは本を二冊買いたいから、そのために私を誘ったってこと??



「先行発売のものには、限定のDVDが付いてるんだ。」

史郎さんは、そう言ってにっこりと笑った。
そうか、私はその限定DVD付きの本が買いたかったから、私を誘ったんだ。
ただ、それだけのこと。



……そうだよね。
それ以上の何かがあるわけない。
そんなこと、わかってるけど…でも、やっぱりなんだか気が抜けた。



「入口近くのレギラのジオラマ見たか?」

「え?あ…あぁ…見ました。」

「あれは、第一作の映画のシーンの再現なんだ。
大阪の街を破壊しながら、進む有名なシーンだ。」

私達はもう一度、入り口近くのところに戻り…
一作目のレギラ映画のうんちくを、いやという程、聞かされた。
熱い、熱いよ…!
史郎さん、本当にレギラのことが大好きなんだね。