「わっっ!」



目が覚めた時、心臓が口から飛び出しそうになっていた。
ついでに汗びっしょり。



全くもぅ~!
なんておかしな夢なんだろう。
王妃様なのは良いとして、なんで史郎さんが王様なのよ。
しかも、家事をさせられる王妃って、何なのよ。



ま、夢なんて、たいていこういうおかしなものなのかもしれないけど…



(……あ。)



時計を見たら、もう9時近かった。
初対面の人の家だっていうのに、そんなに爆睡しちゃったんだ、私…
今日は土曜日だから仕事は休みだけど、いい加減起きないと史郎さんが…



……あ、そっか。
史郎さんは、確か早くに出掛けるって言ってたっけ。



もそもそ起きて、居間をのぞきに行ってみたらそこには誰もいなくて、お屋敷自体、しーんと静まっている。
あ、そういえば、史郎さんの部屋がどこなのかも聞いてなかった。
とりあえず、一度部屋の方に向かって顔を洗い、それから台所へ向かった。
台所にもやっぱり史郎さんはいない。



テーブルの上にあった食パンをトースターに入れる…
やっぱりなんだか落ち着かないな。
だって、ほぼ知らない人の家にひとりでいるんだもの。
史郎さんは不安じゃないのかな?
見ず知らずの他人をひとり家に残して…
あらためて、史郎さんって変わった人だなって感じた。