恋のキューピッドは怪獣でした!

「ほら、ごらん。
あんたがもたもたしてるからギリギリになったじゃないか。」

「……すみません。」

もたもたしたつもりはなかったんだけど、やっぱり昨日の疲れが残ってたのか、手島さんには注意されっぱなしだった。
なにより、昨日はぬか床ををかき混ぜるの忘れてて、そのことでも叱られた。
なんせ、昨日は急に出かけることになったからね。
しかも、帰ってからはちょっと精神的にアレだったし。



史郎さんの様子は、いつもとまるで変らなかった。
ってことは、昨日のことも気にはしてないってことかな?
じゃあ、わざわざ蒸し返すことはないか…
でも、昨夜は遅くまでかかって一生懸命書いた手紙だし…



「じゃあ、後はよろしくね。」

「行ってらっしゃいませ。」



私は、史郎さんを見送りに着いて行った。



「あ、あの…」
「昨日のことなんだけど…」



玄関で、二人の声が重なった。



「あ、なんでしょうか?」

「あ…うん、昨日のことは手島さんには言わない方が良いかなって思うんだが。」



(あ……)



元々、言う気はなかったけど、そうだよね。
手島さんにはきっと言わない方が良い。



「そうですね。黙っておきます。」

「うん。それで、君の話は?」

「えっ!?あ…そ、その…」

恥ずかしいけど、渡さなきゃ…



「あ、あの…こ、これ…」

私は封筒を差し出した。



「何、これ?」

史郎さんは怪訝な顔をした。
そうだよね?突然、手紙なんてちょっと怖いよね。
どうしよう!?でも、今更、引っ込めるのもおかしいよね?



「えっと、その……」

なんて言えば良いんだろう?
私が迷ってると…



「……わかった。」

史郎さんは手紙を受け取り、扉を開けて外へ出て行った。