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昨日に引き続き、先行書類の出来上がったことを電話すると、またしても紅林さんが取りに来た。
大島さん、どうしたんだろう?

紅林さんはというと、相変わらずの無表情。
だけど会話をするときはきちんと目を見て話す。
真面目な人なのかなという印象。
意思の強そうな鋭い目付き。
決して睨んでいるわけではない、ただ凛とした、その目に吸い込まれてしまいそうだ。

書類を持って帰ろうとする紅林さんを、思わず呼び止める。

「あのっ、大島さんどうかしたんですか?」

私の言葉に、紅林さんはピクリと眉を動かした。
怪訝な表情にさえ見える。
あれ、これ聞いちゃいけなかったかな?
そう思って、慌てて言い訳のようなことを言って取り繕う。

「いえっ、いつも取りに来られるのが大島さんだったので、どうしたのかなーと思って。」

「…大島はインフルエンザで休んでいるんだ。」

「えっこの時季に?大変ですね。」

冬でもないのにまさかのインフルエンザ。
大島さん、どこで貰ってきたんだろ?

紅林さんは帰ろうとしていた体をしっかり私の方に戻すと、言った。

「だから今週は俺が取りに来るよ。」

マジですかー!
驚きと喜びがぶわっと押し寄せてきたけど、ここではしゃいだら変な子に思われてしまうのでぐっと我慢。
至って平静を装いつつ返事をする。

「わかりました。お待ちしてますね。」

平静を装ったつもりだったけど、完全に顔は嬉しさでいっぱいのニコニコ顔になっていたと思う。
そんな私に、紅林さんは少しだけ表情を緩めてくれる。

「ありがとう。」

いつもの電話越しの優しい口調で。
そう言って、図面管理課を出ていった。