突然ですが、武士拾いました

 何をするわけでもなく、マユはボクの隣で一緒にソファに座って、家事をテキパキとこなすノリコさんの様子を眺めていた。とりたてて会話をすることもなく、真一文字に唇を結ぶマユの横顔を見て、子供ながらにボクはずっも申し訳ないと思っていた。マユがノリコさんと親子水入らずで過ごせるはずの時間の一部をボクは奪ってしまっているのだから。

 ある時、ボクはマユに言ったのだ。ごめんねって。お母さんとの時間、減らしちゃってるよね――って。

 その時、マユがボクの方を向いて、笑顔を浮かべてくれたことをボクは決して忘れることが出来ない。