僕は彼女の名前をまだ知らない

「寛輝が幼稚園に入る頃……だね。
寛輝のお父さんが亡くなったのは。」


改めて言われると、ずっしりと肩に重みがかかる。





「そこからが寛輝の話と違うんだけど。

お姉ちゃんは、虐待なんてしなかった。
お姉ちゃんは、必死に寛輝を育てた。」



「え……」


驚きやら罪悪感やら、いろんな感情がぐるぐるまわって気持ち悪い。