僕は彼女の名前をまだ知らない

僕は、ゴクリと唾を飲み込んだ。




「まず、寛輝の本当のお母さんは、私のお姉さん。
それは知ってる?」


「うん。」



「お姉ちゃんは、小さい時から体が弱かったの。
特に、小学生の時は、ひっきりなしに喘息の発作を起こしてて、子供ながらに可哀想と感じた。」







僕の知らない、僕のお母さんの話。



全く想像できなくて、まるで、物語を聞いているみたいだ。

まるで、小さい子がお母さんに、絵本の読み聞かせをしてもらうみたいに。

僕のどこかに、読み聞かせをしてもらった記憶があるとすれば、それは、本当のお母さんにしてもらったのだろう。