「彼女、怒ってなかった?」


唐沢しのぶ(からさわ しのぶ)に訊かれ、正典はハッとした。


「別に。怒ってなかったと思うけど・・・少し変だったかな」


「きっと疑ってるのよ、他に女がいるんじゃないかってね」


「まさか」


「あら、女心が分かってないのね。―――女はね、男の行動には敏感なのよ。


それに、寂しがり屋なの。最近あまり一緒にいる時間ないんじゃない?」


「・・・」


「そうなのね?可哀想だわ、彼女。少し時間作ってあげなくちゃ」


「でも・・」


「事情は分かるわ。でもね、その目標に達する前に彼女の心が離れて行くわよ?」


「分かった。なるべく時間作るようにするよ。―――オーナー、忠告ありがとう」


しのぶはニッと笑って、


「さぁ、お客が来たよ」


と、忙しそうに立ち上がった。