「もういいから帰れ。プリントは持ち帰って次の補習で提出すればいいから」
……補習、次もあるんだと思いつつも。きっと先生にもクリスマスの予定があるのかもしれない。
ポケットからチロルチョコを取り出して、「気を付けて帰れよ」とそれを私たちに渡すと、そそくさと廊下に出ていってしまった。
……チロルチョコ。しかも私が好きなミルククリーム入りのやつ。
あれ、なんかこれだけで泣きそう。
どんだけ今日の私は弱くなってるんだろう。
「よかったね。チョコ好きなんでしょ?」
私は弱さを隠すようにプリントをカバンに閉まって、コートを羽織る。
「うーん。チョコは好きだけどこれは別に嬉しくないかな」と、成瀬くんも同様に帰り支度をはじめた。
「今日は話し相手になってくれてありがとう」
教室にひとりきりだったら、きっと耐えられなかったと思うから。
「話し相手?なんのこと?」
「だって私を気遣って帰らなかったんじゃ……」
「違うよ。桜井さんと一緒にいたかったから帰らなかっただけだよ」
……え、い、今なんて言った?
動揺している私とは真逆に成瀬くんは冷静にマフラーを巻いた。そして、教室のドアを開けて、くるりと顔だけをこちらに向ける。
「俺、桜井さんが補習を受けるから参加したんだよ」
「へ?」
「メリークリスマス」
そう言って、成瀬くんは私の気持ちを置いてけぼりにしたまま昇降口のほうへと歩いていった。



