「惚れた?」

「誰が」

「花奈ちゃんが」

「誰に」

「おれに!」

「帰れ!」



 思わず叫んでしまった花奈。
 それでもヘラヘラ笑っている咲也を無視して、疑問を口にした。



「なんで知ってるの?」

「なにを?」

「名前」

「誰の?」

「わたしの!!」



 このやり取り疲れるなとため息をつくと、咲也はペロッと舌を出して謝る。そして遠慮なく花奈の横に座った。



「知ってるよ。だって、同じクラスじゃん」

「そう、だっけ」



 花奈はクラスメイトの顔を思い浮かべるが、その中に彼はいない。


 花奈にとっては派手な風貌の咲也を知らないとは思えず、どこの誰だと不審に思いながら顔を覗けば、はぐらかすようにそっぽを向いた。