その感情を隠さない様子に、わたしと郁弥さんは顔を見合わせて、頬をゆるませた。

「お母さんにも喜んでもらえたら嬉しいけど、これは、蹴人くんに、その……プレゼント(・・・・・)するために持って来たんだよ?」

お供え、なんて、とてもじゃないけど言えなかった。

蹴人くんはわたしのセリフを聞いたとたん、もっともっと大きな笑顔になった。

「ぼくに?!ほんまに?ぼくにくれるん?」

目をキラキラさせたままクリクリさせて、蹴人くんはわたしを見上げてくる。
その小さな顔は、ガーベラ達に簡単に隠れてしまう。

「うん、そうだよ。でも大きすぎて蹴人くんには持つの難しいから、お兄さんにお家まで運んでもらおうね」

「ありがとう!お姉ちゃん、お兄ちゃん」

「これを買ってくれたのはお姉さんだよ」

郁弥さんが体を起こしながら言った。
でも蹴人くんは「ううん」と首を振る。

「お花屋さんで買ってくれたのはお姉ちゃんやったとしても、お兄ちゃんかって今運んでくれてるやん。だから、二人にありがとうや!」

子供らしい純粋な理論に、郁弥さんも目を細めて受け入れた。


そして、郁也さんは大きなガーベラのアレンジを手に、
わたしは蹴人くんと手をつないで、
大路さんの……蹴人くんの家に向かって、歩き出したのだった。