「あ、やっぱり分かりますよね」

大路さんは少々照れたように肩をすくめてみせた。

「外では出ないように注意してるんですけど、主人も大阪出身なので、主人と話したあとはどうしても関西弁が出るときがあるんですよね」



――――――『お祖父ちゃんとお祖母ちゃんはみんな大阪におるよ』



あの朝の蹴人くんの可愛い笑顔を思い浮かべていたのは、きっとわたしだけじゃないはずだ。

ダメ押しとばかりに確かな情報を得たわたしは、意を決して大路さんを正面に捉えた。

「あの、大路さん……?」

「なあに?」

「実は、あの、わたし……、いえ、わたし達、……蹴人くんと、会ったことがあるんです」


あの不思議な男の子が、まさか現実に存在する男の子だとは、わたしは到底信じられない気持ちだったけれど、ここまで条件が重なったものを否定することはできない。

恐る恐る打ち明けたわたしに、大路さんはぽかんと口を開けて、この人は何を言ってるんだろう?とでもいうような、呆気にとられたような表情をしていた。

それは、決して驚いた顔ではなくて、わたしはそのリアクションをどう受け取ればいいのかわからなかった。

すると私のすぐ隣にいた郁弥さんが、「失礼ですが、」と大路さんに話しかけた。

「息子さんのお歳をうかがってもよろしいですか?」

大路さんの反応が思っていたのと違ったのは郁弥さんも同じだったようで、どことなく控えめに訊いた。

そしてその質問に、大路さんはぽかんとしていた表情をやめて、唇を一度だけキュッと強くしぼった。

やがて口を開いた大路さんの答えに、わたし達全員が、言葉を失ってしまったのだった。



「もうすぐ三歳になります………………………生きていたら」