「いえ……」
わたしの声はどうしようもないほどか細くて、頭を横に振る動きはどうしようもないほどぎこちない。
………そんなまさか、二人の結婚話がわたしの勘違いだったなんて。
わたしが勝手に誤解して、思い込んでいただけなんて………
わたしはその事実を知って嬉しく思ったりホッとするよりも、一人で勝手に勘違いしてたくせに思い切り落ち込んだり悩んだりしてたことが恥ずかしすぎて、もう、穴があったらどころではなく、地球の裏側にまで深くて深い穴を掘ってしまいたくなっていた。
一気に体じゅうが熱々と沸騰状態になってしまったわたしは、完全に体温調整機能が麻痺しだして、額には汗の感触もある。
なのに、そんなわたしとは真逆で、諏訪さんはいたって冷静に「ああ、それでか……」なんて、一人納得の声をあげたのだ。
「だから、さっきオレが和泉さんと二人きりになりたいと言ったのを、不思議そうに訊いてきたんだ?」
やわらかい表情で尋ねられても、今のわたしには熱冷ましにはならない。
むしろドキリとしたわたしは更に体温を上昇させて。
「和泉さん……?」
諏訪さんは、しょうがないな、という風にちょっと苦笑した。
「……はい」
「オレが和泉さんと二人きりになりたかった理由、もう分かるよね?」
「ええと………」
諏訪さんがわたしと二人になりたかった理由――――――
それは、意識が戻ってすぐに諏訪さんが告げた、あの言葉が関係してるのだろうか………
――――――好きだ――――――
諏訪さんには浅香さんがいる、そう思い込んでいたわたしは、諏訪さんのその呟きを何かの間違いだと気にしないようにしていた。
でも、二人の関係は誤解だった。
だったら………
その先に導きだされる答えに、わたしは目眩を感じそうになる。
けれど目眩に逃げることを許さないとばかりに、諏訪さんがわたしの名前を呼ぶ。
「和泉さん」
「……はい」
「オレは、和泉さんが好きだ」
わたしが自分で引き出すよりも早く、諏訪さんが、もう一度、それを告げたのだった。