死にたい君に夏の春を

九条はこちらに背を向けて、錆びてボロボロになったパイプ椅子に座った。


そして大量にあったカップ麺を1つ取って、開ける。


まるでホームレスのようだ。


そこにいるのが、長袖のセーラー服を着た少女というのが、なんとも訳の分からない状況である。


彼女はいつもこんな生活をしていたのか?


いろんな疑問が浮かぶ。


だから、聞かずにはいられなかった。


「ここに住んでんの?」


関わりたくないはずなのに、知りたかった。


「……うん」


カップ麺を開ける手が止まる。


「どうして?」


彼女はこちらを見て言った。


「家に帰りたくない。それだけ」


シンプルなようで、裏では複雑な理由があるのだろう。


そんな理由がなければ、こんな所には住んでないはずだ。


でも彼女は何故か、スッキリとした顔をしていた。


もう失うものなんてない、そんな表情を。