数日後。

なんだかんだで、凛子の言いなりになる私もどうかしているとは思った。
でも、それ以上に思うのだ。

なんでもいいから理由をつけて、藤澤さんに会えたらいいなあと。
動機が不純なのは百も承知なのだが、ファン心理というものはどうやら図々しいらしい。


会社のみんなには無理を言って少しだけ早めにお昼休みに入らせてもらった私は、凛子と待ち合わせをして山館銀行まで来ていた。
思いっきりそれぞれの職場の事務服に身を包んでおり、ちょっとそこまでランチしにきたようにとられても不思議ではない。

五十日ではないので、銀行内にはそこまでお客さんがいっぱい!というわけでもない。
午前中しか窓口に立たない藤澤さんは、まだそこにいて仕事をしていた。


「番号札、何番?」

「78番」

「もうすぐだね」

凛子の手元にある番号札を見た私がそう言うと、彼女は落ち着きのないソワソワした動きで行内を見回している。

「さっきからどうしたの?」

「いや、栗原いないかなーって思ってさ」

あぁ、そりゃそうだ。
凛子は栗原さんのファンなのだから、探してしまうのは当たり前。私が藤澤さんを探すように。

まだキョロキョロしている凛子に問いかける。

「これさ、もしも違う窓口に呼ばれたらどうするの?」

「んー、ちょっと藤澤に用事あるんですって言って変えてもらおうかな。……あっ、うっかり呼び捨てにしないようにしよーっと」

「“様”をつけてもいいくらいお世話になったんだからね」

「はぁい」