「甘いものよりは、おせんべいとかの方がいいのかな?」

「……うーん、どうなんだろうね。あまり量が多くても困るよね、きっと」

「ところで彼女いるの?藤澤って」

「えっ。知らない」

そういえばそのあたりのことも全然知らない。
独身であることは確かだと思うが、恋人の存在まで考えが及ばなかった。

「なんで柑奈ってそういうの確認しておかないの?一番重要なことじゃない」

「彼女いる人が今度二人で飲もうって言うのかな。…言う人もいるか、中には」

「え!?言われたの!?」

飛びつくように食いつかれたので、驚いて思わずギクッと肩を震わせる。

「なんていうか、話の流れでね。社交辞令みたいな」

そうじゃないと信じたいのは山々だが、社交辞令の可能性の方が高いのは自分でも分かっている。
それでも嬉しかったし、ちょっと期待している部分もあって、なんとももどかしいところだ。


「あっ、お酒のおつまみはどう?焼酎も飲むみたいだし、お酒は好きだと思うんだよね」

一応、これでも真剣になにがいいか考えていた私は凛子を引っ張って、おつまみ系が売っている場所までやってきた。
海産物を使ったものやら、チーズやサラミなどの定番やら、こちらも種類は豊富だ。

「毛ガニとか持っていったらさすがに引くかな」

「……引くでしょ」

凛子のことだから本当に毛ガニを携えて行きそうで恐ろしい。


「ねぇ、これ持っていく時、もちろん柑奈も来てくれるよね!?私一人じゃ絶対無理だから!」

まだ何を買って持っていくかも決まっていないのに、ひしっと凛子が私の腕をとって掴んだ。
なんとなくそう来るだろうと予感していたので、絡みつく手を振りほどこうとするも、一切びくともしない。

「なんで私まで!やまぎんの窓口に行けば会えるんだから一人で行ってよ」

「だって気まずいじゃん……」

「大丈夫だよ、すごく優しい人だから」

「ファンには塩対応だよ、いっつも」

「だからね、あれは人見知りのせいであって……」


口論しながらも、最終的に凛子はおかきの詰め合わせと、鮭とチーズのミルフィーユを購入していた。