打って、守って、恋して。


「はい、出ました。藤澤職人の本領発揮」

すっかり優越感に浸っている凛子をよそに、私はユニフォームの崩れを直している藤澤さんの姿に釘付けになっていた。

あんなに華麗なプレーをやってのけて、それでも何事もなかったみたいな顔をしている彼を見ていると、なんだか性格がうかがえるようだ。

試合に勝つまでは、簡単には喜ばない。そういうことなのだろう。なにしろ今回は特別。優勝がかかっているのだからなおさら。
緊迫した場面でもいつもの動きができるところもまた素晴らしい。


今さっきの彼の守備を思い返して、胸が苦しくなってまた深呼吸。

「打球がどこに飛んでくるのか、分かってるみたい」

「あー、たしかにね!」

「これでホームランでも打ってくれたらな……」

つい漏れる本音に、凛子はアハハと笑い飛ばした。

「ホームラン?無理無理!藤澤がホームラン打ったの見たことないよ!」

「高校から数えて十本くらいだって」

ほら無理だよ、と当たり前のように言われるとなんだかそれも納得できないというか、解せない。
まぐれで当たってホームランになるとか、そういうことはないのだろうか?


「今日はヒット一本出てるんだっけ?」

「うん、第二打席で出てるね」

「だったらまあ、いってもツーベースくらいじゃない?」

凛子の冷静な分析は、私より見てきただけあってリアルだ。
この九回の相手の攻撃が終われば、いよいよ延長戦に突入する。