打って、守って、恋して。


一回表にやまぎんが犠牲フライで一点。
三回ウラで相手チームがツーランホームランで二点。
四回表にやまぎんが四番のホームランで一点。

2対2になって、そこから点数は一切動かなくなった。

七回表を終えたところで、やまぎんのピッチャー交代が告げられる。


「栗原だーーー!まさかのリリーフ!」

先発ではないからと諦めていたらしい凛子が、ピッチャー交代のアナウンスを聞いて興奮したように双眼鏡を取り出した。
マウンドで投球練習をしている彼を見つめているらしい。

リリーフ登板をするというのは私は沙夜さんから聞いてはいたけれど、あえて凛子には伝えていなかった。
情報の出処が沙夜さんだと分かったら彼女が落胆するのは目に見えていたので、どうしても言えなかったのだ。


「おらー!スカウトマンたち見てるかー!栗原のことちゃんと見てろよー!!」

どこぞの酔っ払いか、と言いたくなるような野次らしきものを前方に陣取っている(おそらく)プロのスカウトマンたちに吹っかけている凛子は、もちろん素面である。


軽い投球練習を終えた栗原さんのいるマウンドへ駆け寄った藤澤さんが、何かを話しかけている。
細かい気配りのおかげなのか、張り詰めていた栗原さんの表情が少しだけ和らいだ気がした。

グローブを互いにタッチすると、藤澤さんはセカンドのポジションへ戻る。

試合が再開した。


両チームの応援の熱もどんどん上がっていた。
これまではそれなりに長短打が出るので決して投手戦ではない試合だったのだが、要所要所でピッチャーが締めていた。

それが、栗原さんが投げ始めた時からガラリと空気が変わった。

三振と内野ゴロを量産し始めたのだ。
フライはほとんどなく、相手チームの打者のバットが空を切る。

七回は三振二つとショートゴロ一つ。
八回は三振一つとセカンドゴロ二つ。

まるでピタリと相手を操るみたいに、三振とゴロでアウトを築いた。
当然、相手チームの応援団の威勢の良さが萎んでいく。